「言うべきか、言わざるべきか、それが問題だ」:リモートワーク編

本記事は、KEIEISHA TERRACE連載:戦略HRBPから見た、人・組織・事業・経営の現在&これから 第1回 「言うべきか、言わざるべきか、それが問題だ」:リモートワーク編 より転載を行っております。*


それは今年のGWの出来事でした。いよいよCOVID-19の影響があちらこちらでビジネスに影響が出てきて、ある企業では経営陣が一挙に集められ、緊急対策会議が連日のように予定されました。

もうその頃には不要不急の外出は控えることは、世の中的にも言わずもがなの空気になっており、GW中は自宅でゆっくりする以外は特に予定もないし、未曽有の危機こそ会社が一丸となって乗り越えていかなければならない状況で、闘志さえ燃やして「ここが踏ん張りどころ!」とばかりに使命感に燃え、自分を鼓舞し、早朝から夜までいつも以上に働いていました。これ、まさしく私に実際起こったことです。

みなさんが置かれていらっしゃる事業環境も多かれ少なかれ、この3-4か月はそのような‘緊急モード’でお仕事をされ、経営判断をクイックに下していかなければならない局面に置かれたのではないでしょうか。

 

このような、いわゆる有事の状況を、ここまでの長い期間、トンネルの先の出口が明確に見え切らない中で、しかも同じオフィス空間や、文字通り’顔を突き合わせて’‘空気を感じながら’仕事ができないリモートワークの環境下で、普段よりも難しい経営判断をいつも以上にスピーディに下していかなければならないことに、私自身も多くの方々にとっても、初めて直面した状況だったのではないでしょうか。

しかも、ここまで長く‘緊急モード’を続けていくことを、誰が予想できたでしょうか。

一過性ではないことが分かった今の環境の変化の中で、これまで私たちが直面しなかった新たな組織課題が出てきていることに気づかされます。例えばこのような課題に、頭を悩まされていないでしょうか。

  1. 緊急モードに振り切ったが、どのタイミングで、どのように通常モードへ戻っていったらいいか判断がつかず、今後の働き方の指針について、社内へのアナウンスや指示に戸惑い、コミュニケーションのタイミングが遅れてしまう
  2. 今回やむを得ずリモートワークに踏み切ったが、今後続けていくにも制度やインフラが追いついておらず、オフィスに出社する働き方に結局戻ってしまったことで、社員からもがっかり感が漂っている
  3. 今回の事でリモートワークの推進が一気に進んだが、今度は組織内で起こる心理的な距離を遠隔でどのように縮めながら、互いの信頼を高いままキープして生産性を落とさない働き方ができるか、不安が残る

コロナ禍で今までモヤモヤしていた組織課題や違和感が、ここにきて溢れ出している場面も少なからず見受けられます。

今後バーチャルな環境がメインとなり、リアルで場を共有することに関しては、明確な意図や価値があるときだけ実現することが当たり前となる時代がくる中で、私たち経営者や組織を預かるリーダーたちはどのようなハード面、ソフト面の準備を着々と進めていけばいいのでしょう。

経営者・リーダーがリモートワークで気をつけるべき3つのポイント

1.違和感をそのままにしない:言うべきタイミングを逃さずに、あえて言葉にする

バーチャルやオンラインというと聞こえはいいですが、ウェブカメラを通していても、ましてやウェブカメラなしで声だけを通してでは、以前は顔を見て違和感があったことに関して「どうしたの?」と声がかけられたところが、できなくなるわけです。だからこそ、今まで以上に相手の使う言葉やトーン、感情、意図を効果的に引き出すような、質問力と察知する高いアンテナが物を言うようになります。

効果的に相手のことだけではなく、自分をも客観的にオブザーブ(観察)できるようになれば、ちょっとした違和感にも気づけるようになります。違和感に気づいたら、タイムリーに、なるべくストレートに話し合いの場を持ち、解決する糸口を共に見出すことが、リモート環境ではスピーディな解決に繋がります。

2.オンラインだからこそ、その人と知り合う絶好のチャンス

コロナ禍で以前のように飲み会でお互いのことを知る機会がなくなってしまったので、相手と知り合うことや親交を深められなくなったと感じていますか?実際私も最初は寂しさを感じることはありましたが、発想の転換で「オンラインだったらどこにだれがいようが、距離を気にすることなく飲み会で話ができるはず!しかも自分の好きなお酒とつまみを片手にリラックスしたパジャマで参加できるなら最高」とばかりに、バーチャル飲み会を社内で積極開催しました。これが大うけでした。

普段なら出張をしなければ、なかなか別の拠点にいる仲間と飲むなど、次はいつだろう、と思っていましたが、オンラインだからこそ、オフラインではつながりにくい仲間同士で気軽につながる場さえ作ってしまえば、これほどお互いを知り合う絶好のチャンスはありません。

3.顔を合わせなくなったから意思疎通ができなくなったのは幻想:これまで築いてきた関係性が嫌というほど露呈する

コロナ禍になって、なかなか部下と顔を合わせなくなったために、意思疎通が図りづらくなった、または、以前はコミュニケーションがうまく取れていたのに、リモートワーク環境になってから、うまくいかなくなった。本当でしょうか?ひょっとしたら、それは元々の関係性が、何となく顔を見たり空気を感じ取りながらお互いに表層的な調和を保っていただけということはないでしょうか。

前はそんなに話をしなくてもわかり合っていたのに、今は顔をみなくなったので、難しくなった、というマネジャー職の方の声を聴くことも少なくありませんが、往々にして、実はわかり合っていたと思っていたのはマネジャーだけで、部下はそう思っていなかったケースもあるようです。

リモートワークがメインとなる時代では、こういった何となく、が通用しづらく、だからこそ改めてチームメンバーとの関係の質を改めて見つめ直し、再構築することが、生産性の高いアウトプットをチーム一丸となって出し続けられることへつながります。

 

リモートワークをうまくいかせるためには、というトピックで多くのウェビナーや記事が書かれていますが、キーとなるのはZoomやTeams、Slackなどのツールの使い方でも、制度や手当をどれだけ手厚く整備するか、だけではないと思うのです。

今回のコロナ禍で私たちが直面している組織課題は、往々にしてオンラインやバーチャル環境に限定されない、それ以前からも重要視されなければならなかった、「組織内での信頼指数」「関係の質」「心理的な距離を縮める場の提供」「EQ(心の知能指数)を重視した人材育成」などが起因して、水面下にあったものが、表面に噴き出しているように感じます。

こういう組織の症状が、もし皆さんの会社でも起こっているのであれば、これは千載一遇のチャンスです。これほど組織が一丸となって乗り越えていくべき機会やわかりやすいストーリーはなかなか巡ってきません。

もし今日の記事を読んでいただいて、一つでも当てはまる組織の症状が見受けられたなら、今こそ勇気を出して、これまでと違ったやり方を試してみるチャンスです。有事の時こそ、組織の原動力を同じベクトルに向ける好機はないと、私は思います。

桜庭 理奈

2020年に35 CoCreation合同会社を設立。経営・組織・リーダーシップ開発コーチング、講演活動を通して、多様なステージにある企業や経営者を支援している。

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