ロバート・キーガン氏の提唱する成人発達理論とは

成人発達理論とは

成人発達理論とは、ハーバード大教育大学院のロバート・キーガン氏が提唱した、成人になっても人は成長を続けるという理論です。

旧来の考え方では人間は成人になると成長がストップし、それ以上の成長は見込めないと考えられていました。ロバート・キーガン氏の提唱した理論では「人は成人してからも知性や意識が発達し、生涯にわたって成長し続けられる」という考え方が前提になっており、脳科学分野の進展により正しさが裏付けられたことから、現在では広く受け入れられています。

成人発達理論はビジネスの分野では、成人である従業員を育成するために重要な考え方として、以下の理由から人材育成や組織開発において注目されています。

成人発達理論がビジネスにおいて注目される理由

理由

VUCAによる環境の激動

VUCAとは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を取って作られた、将来の予測が不確実で困難で状況を意味した言葉です。

近年では地政学的リスクや、新型コロナウィルスの流行などがVUCAによる環境変化として上げられ、予測不能な事象が発生する状況下では、変化についていけない組織が生き残るのは難しい時代です。
VUCAの時代を乗り切るには、時代の流れを捉えてその人が持つ価値観や判断基準を環境の変化に合わせて対応する必要があり、成人発達理論がビジネスにおいて注目されはじめました。

VUCA「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」による環境の変化

理由

少子高齢化社会の進展

日本は少子高齢化・人口減少社会といった問題を抱え、労働人口の減少が顕著になりつつあります。さらには終身雇用制度の崩壊や、若者の価値観の変化による会社への帰属意識の低下など、企業にとっては、新しい人材を獲得するのが難しく、既存の人材を育てることが重要な課題です。

ところが働き方の多様化によって、転職や独立が選択肢として増えており、獲得した人材が定着しないこともあり、従業員のエンゲージメントやウェルビーングの向上を目的とした、人材育成やマネジメントが重要となってきています。

従来の仕組みや技能教育ではカバーしきれない、知性やその人の在り様を開発する観点から、成人発達理論の活用に注目が集まっています。

少子高齢化社会の進展・成人発達理論の重要性

成人発達理論による知性の段階

成人発達理論には以下3段階の知性が解説されています。

環境順応型知性
チームワークを重んじ、上意下達型で指示を待つマネージャー。自己の信念や確固たる考え方が確立できていないため、指示待ちやイエスマンになる傾向が高いと言われます。多くの日本企業はこの段階に属し、ここからの脱却が大きな課題となっています。
自己主導型知性
自分なりの考え方を持ち周りの状況や環境を踏まえつつ、チームを強く引っ張るマネージャー。自分なりの判断基準があり、自律的に仕事を進める事ができるが、環境の変化に対応したり、視座を変えたりする能力には限界があります。
自己変容型知性
自分の価値・判断基準を確立しながらも、周りの意見や環境の変化に柔軟に対応し、状況に応じて自らの考えや戦略を修正することができます。批判的内省をくり返し、多様な意見を取り入れることに抵抗感を感じない次世代のリーダー。