プロジェクトをはじめたものの、何だかうまくいかない……。そのお悩みは、社内人材で構成された「グロースチーム」が解決してくれるかもしれません。
そこで今回は、Facebook社の目標を達成させた「グロースチーム」の存在と活用方法についてご紹介します。
企業が「グロースチーム」をつくるべき理由
グロースチームとは、事業単位ではなく、細かな目標達成に向かって、各分野に長けた人材が集結し、協働するチームのことをいいます。
従来 | 各事業分野ごとに分けられた部署で仕事をするスタイル |
グロースチーム | プロジェクトの成功を目的に、多様なスキルを持った人々が連携する組織 |
最近は、業務委託など社外人材を活用する企業もあるようです。しかし、より迅速で的確な企業の成長を実現するためには、社内の人材でグロースチームを結成することが理想的とされています。
「グロースハック」から見る「グロースチーム」の必要性
グロースという言葉から、「グロースハック」を連想する方も少なくないでしょう。グロースハックとは、自社の製品価値や市場ニーズを正しく把握するためのデータ分析やユーザーの行動分析を行い、実験的アプローチをハイスピードで実装、検証、改善することで事業を急成長させるマーケティング手法です。
そこでは、エンジニアだけでなく、マーケディング部門やプロダクト部門などとの部門横断的な連携=グロースチームが必要とされています。バランスの良い業務を行うためにも、企業がグロースチームをつくる意義はますます高まりそうです。
Facebook社が誇る「グロースチーム」の存在
グロースチームを取り入れた成功例として、SNS界で確固たる存在感を放つ「Facebook社」があります。毎月のアクティブユーザーを10億人以上にまで増やしたFacebook社の成功の秘訣は、グロースチームが掲げた目標と達成によって成し遂げられたといっても過言ではありません。
そこで、グロースチームのモデルケースとしてFacebook社を詳しく見ていきましょう。
ミッションを達成するために構成されたFacebook社のグロースチーム
Facebook社のグロースチームは、専門知識を持つ部署単位で作業をするのではありません。新規ユーザー獲得という目標を達成するために、次のようなフロー別にそれぞれがチームを組み、役割を遂行したといいます。
◆ビッグデータの分析
グロースチームのなかでも、最も重要な役割を持つとされているのが、「ビッグデータの分析」。具体的には、次のようなプロセスを繰り返すことで、成功を導いたといわれています。
- ユーザー数を伸ばすための仮説を考える
- 仮説を検証するために、ログデータを集めてプログラムをつくる
- 集まったデータを分析する
- 分析結果に応じて、変更やテストを行い、テスト結果を測定する
◆新規顧客の獲得
Facebook社のグロースチームでは、インターネットマーケティングに特化した人材が、次のような施策を使って、新規顧客の獲得(ダイレクト・アクイジション)を実現したといいます。
- SEO:検索エンジンで、発信した情報が上位に表示されるための施策
- PPC:クリック課金型広告(リスティング広告)を活用した施策
- Eメールマーケティング:関連情報が記載されたEメールをユーザーに配信する施策
◆製品開発
Facebook社のグロースチームでは、新規ユーザーの行動に応じた製品開発を行ってきました。具体的に構築したのが、次のような点です。
- ログアウト状態でも、一種の広告ページとして表示されるFacebookページ
- 新規ユーザー獲得に関するフロー
- 新規ユーザーの登録フロー
- Facebookの内での通知・広告
- その他:ユーザー数の増加に関連するすべての施策
◆組織で共有する価値観の確立
Facebook社内には、次のような2つのタイプのチームが存在するといいます。
- データドリブンなチーム:数値化できる基準を目標にする
- データドリブンではないチーム:成果に向けた、行動の価値を測る
これら2つのタイプの間に入り、問題解決や考え方を調整するのも、グロースチームの大事な役割とされています。
◆人材採用
会社が成長することで、転職希望者も増加します。そのためユーザーの増加という目標を達成するためにも、優秀な人材を採用するための専門グロースチームの活躍が必要となったのです。
事業目標に向けた施策を社内のチームのみで遂行しているのもFacebook社の特徴ですが、これも優秀な人材を採用することが大事なミッションだからこそ。外部人材を加えずに迅速な施策を行った結果、事業目標が達成されたのです。
【企業の成長のために】グロースチームの役割構成
Facebook社と同様に、目標達成に向けたグロースチームを結成する際、どのような人材で構成するとよいのでしょうか。おすすめの役割別に、それぞれの特徴をご紹介します。
◆グロースリード |
グロースチームの目標とスケジュールを設定、管理する。 |
◆プロダクトマネージャー | プロダクトの責任者。グロースチームの人材構成の決定も担う。 |
◆エンジニア | エンジニア目線のアイデアから、機能の構築を行う。 |
◆マーケティングスペシャリスト | エンジニアと協働しながら、目標達成に向けたアイデアをマーケティングで形にする。SEO、SNSなど、専門分野別にアサインする。 |
◆アナリスト | 顧客データの収集や分析を行う。 |
◆プロダクトデザイナー | ユーザーの心理や行動を想定しながら、ユーザーが操作しやすいプロセスを構築する。 |
このようにグロースチームは、細かな役割を持ったメンバーで構成されることが理想的です。ただし、プロジェクトの規模や予算、もしくは人材のスキルによって、いくつかの役割を兼務することもあります。こうした構成によって、よりコアな需要まで手が届き、プロダクトが成功へと導かれるのではないでしょうか。
企業を支えるのは、目標とやるべきことを共有するグロースチーム
Facebook社だけでなく、世界、そして日本国内外でも多く取り入れられている「グロースチーム」。一人ひとりのスキルが重要視される現代において、チームが一丸となって目標に向かう姿勢が必要と考えられています。
そして共通する目標に向かって進むためにも、一人ひとりが点と点の仕事をしていてはいけません。協力と情報共有を徹底したグロースチームが、成長する企業にとって欠かせない存在となることでしょう。
桜庭 理奈
2020年に35 CoCreation合同会社を設立。経営・組織・リーダーシップ開発コーチング、講演活動を通して、多様なステージにある企業や経営者を支援している。