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第4回「焼け石に水」な制度改変に終止符を打つ-体感型の人事評価制度を作るには

本記事は、KEIEISHA TERRACE連載:戦略HRBPから見た、人・組織・事業・経営の現在&これから 第4回 「焼け石に水」な制度改変に終止符を打つ-体感型の人事評価制度を作るには、より転載を行っております。*


私が暮らす茨城では、秋らしい食材である栗や柿、リンゴを見かける時節になりました。夜長な夜にはコオロギや鈴虫、蛙の鳴き声に耳を傾けながら、今年はコロナの影響もあってか、一年が例年以上に早く過ぎていったなぁ、としみじみと考える瞬間があります。これから師走に向けて2020年もラストスパートに差し掛かります。皆さんいかがお過ごしでしょうか。

さて、この時期は、企業によっては期が変わるタイミングでもありますね。それと同時に、評価制度、評価項目、評価システムの見直しに取り組んでいる企業もあると思います。最近特に「形骸化してしまっている評価制度を改訂したいのだが、何を軸に見直しをしていいか迷ってしまう」というご相談をいただきます。その中でよく耳にする声として、以下のような代表的なものがあります。

  • 従来の経営からトップダウンでのカスケード型(上から下へ連なって展開する型)の目標設定が時代に合っているのか分からない
  • 今まで各部門に裁量を任せすぎていて、今更全社で一丸となって統率の手綱を引くような印象を与えることで、チームの士気を下げるような制度は作りたくない
  • 部門の統廃合で、一人ひとりが自己完結する裁量を持たせたのは良いが、個人商店化してしまってチーム感を失った組織に課題を感じる。チームとの連携をもっと促進するような評価項目をどのように盛り込んだらよいか
  • 数値目標だけに焦点を当てすぎた目標設定と評価で良いのか。何を達成するかも大切だが、同じくらいどのように達成するかの行動も評価しなくて良いのか

評価制度のどこを変えたいか、の前に、評価制度で何を成し遂げたいのか意図を明確にする

先述の相談内容を耳にして、私が最初にお伺いするのは2つの問いかけです。

  1. 評価制度をどのように変えるかどうかの話の前に、そもそもなぜ見直しをするのかの経営の意図は何か
  2. そこに寄り添った制度を実装すると、どのようなチームメンバーの行動が変容することを期待するのか、という明確なビジョンを持っているか

評価制度を何らかの形で変更したいという共通認識があるのであれば、つまりそれは、何らかの理由でその制度が機能不全を起こしていることを、皆さんが多かれ少なかれ違和感を持って感じているからではないでしょうか。まずは、その違和感について、きちんと話し合っていますか。多くの場合形骸化しやすい評価制度の特徴として、経営のメッセージや事業成長指針の方向性と分断されている、別個の評価のためだけの仕組みが出来上がっていることが挙げられます。結果として、組織やチームの中に目的意識を持って日々の仕事に向き合うという意識や視点が生まれず、ましてや自分事として主体的にエネルギーを投入して取り組む気力も起こらない。

つまるところ、「評価制度=形だけ・口だけの誰かが決めた言葉を羅列する年の行事」と認知されている。悲しいけれど、生々しい声をチームメンバーから聴くことになります。そのような生々しい声を聴くことを続けないためには、評価制度のあちらこちらのピースを部分的に改良する前に、経営を担うリーダーや人事を担うマネジャーやHRプロフェッショナルの皆さんには、以下の問いかけを自分たちに向けてしてみていただきたいのです、

  • 私たちは、社会に対してどのような善を成し遂げる企業でありたいのか。その企業ミッション(存在意義)を明文化しているか。
  • そのミッションを組織の背骨と据えた時、経営を担うリーダーは、どの目的地を目指して旅路を歩めばよいかを繰り返しメッセージとしてチームに伝えているか。
  • また、目的地にただ辿り着けば良いだけではなく、旅路を歩む上で共通の約束事(行動指針、バリュー、コンプライアンス、インテグリティ、ガイドライン)を明文化することで、企業のフィロソフィー(哲学)を体現するチームメンバーの成長を促しているか。

上記の問いかけをしながら経営陣や人事を担うメンバーで対話を納得するまで深く議論することが、まず最初の第一歩です。この3つに皆が自信を持って共通言語化できたのであれば、次のステップに進みましょう。

それは、3つの「適」の視点から、制度というそれだけでは無機質な仕組みを、血の通った組織のDNAとして、実装することです。

「適材」-いかに素晴らしい制度でも、生かすも殺すもマネジャー/リーダーの資質次第である

ミッション、ビジョン、ゴール、フィロソフィーが明文化されたのであれば、それを日々の対話の中で実装させられるかどうかは、ピープルマネジャー(チームを持つマネジャー)の力量にかかっています。制度設計と同じくらいか、それ以上に大切な投資は、血の通ったDNAを強力なプロモーターとして推進してくれるチームリーダーやマネジャーの人材育成です。また、そのようなチームを預かる要職ポジションには、先のフィロソフィーを体現しているロールモデルである人材の戦略的な育成、選出、配置を行うことです。時にはこの要職に適していない人材もいますが、それはその人材がこのポジションに適していなかっただけで、他に適した人材がいれば、バトンタッチも視野に入れて人材配置を行います。

「適所」-「人」と「成長」に焦点をあてた対話を通してポジションへのフィット感を評価する

人事評価の目的は、年初に決めたタスクが予定通りできているかを確認、管理することだと思っていませんか。プロジェクトのタスク管理であれば、ガントチャートを使って、チーム間で更新して共有すれば済むはずです。人事評価は、あくまでも「人」と「成長」に焦点を当てた目的意識を持った対話を促進する一つのツールです。自分が見えていないブラインドスポット(盲点)を、周りやマネジャーからの根拠のあるアセスメント(評価)を受け取ることによって、自分の認知の幅を広げていくことで、成長する手助けをしてくれるツールです。そのような対話の中で、自分自身のその職責や職務、ポジションへのフィット感についても見直す良い機会となります。人事評価という一つのきっかけによって、自分を多角的に認知することで、今後成長する方向性やキャリアの方向性について棚卸しする機会にも恵まれます。

「適時」-評価は1年に一回すればよい儀式ではない。フィードバックには賞味期限がある

人事評価はあくまでも、「成長」に焦点をあてた目的意識を持った対話を促進するツールだ、というお話をしました。そのためには根拠のあるアセスメント(評価)やフィードバックが、成長には必須ということでした。ただし、フィードバックの賞味期限は思っている以上に短いものなのです。エビングハウスの忘却曲線によると、人間の脳は20分後には42%を忘却し、1時間後には56%を忘却し、1日後には74%を忘却し、1か月後には79%を忘却すると言われています。よもすれば、明日には7割近くを忘れてしまっているということですね。人事制度を血の通ったものにするには欠かせない対話、その対話に欠かせないフィードバックは、気づいてからすぐに相手に伝えなければ、賞味期限はすぐ切れてしまいます。

ましてや、半年、1年に1回の評価面談や振り返りまで、その期間すべてのフィードバックをどれだけ溜め込んで相手に伝えても、とっくに賞味期限の切れた実感のわかない指摘を延々と伝えられる受け取り側の、納得感のなさとフレストレーションは小さくないでしょう。また、伝える側も実感が失われてしまった言葉に説得力を持たせるために苦慮しながら伝えるのも、辛いことでしょう。人事制度のローンチ時には、是非フィードバックの賞味期限を意識した対話の大切さについても周知、教育をしていくと効果的です。

桜庭 理奈

2020年に35 CoCreation合同会社を設立。経営・組織・リーダーシップ開発コーチング、講演活動を通して、多様なステージにある企業や経営者を支援している。

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