人材系ベンチャー企業で営業職を担当する中山さん(仮名)。周囲から求められることや自分のやりたいことはわかっているのに、思うように動けずモヤモヤする日々を過ごしていた時に、35 CoCreation(サンゴ コ・クリエーション)のコーチングを受けられました。過去にもコーチングを受けた経験があったことから、状況を打開するには「これしかない!」と思ってスタートしたそうです。
コーチングの持つ力を身をもって知っていた中山さんが、桜庭とのセッションで新たに見つけたこととは……? 得られた変化や、今後の活かし方とは……? 丁寧に語ってくださいました。
モヤモヤの言語化、課題とゴールの設定、自分にできるのか?!
35 CoCreation合同会社CEO 桜庭理奈(以下、桜庭):コーチングを受ける前の状況と当時の葛藤について、聞かせていただけますか?
中山さん(以下、敬称略):一言でいうと良い状態ではなかったです。社内の立場も変わった時で、「やりたいことがあるのに、なぜ動けないのかわからない」「マネジメントとの向き合い方がわからない」など様々なモヤモヤを抱えているのに、その打開策もわからなかったのです。
桜庭:そのような時に、なぜコーチングだったのでしょう?
中山:自らの思考の癖が思考を制約していることはわかっていたのですが、その癖が何なのかがわからないことが問題だということには気づいていました。過去にもコーチングを受けたことがあったので、「これはプロに頼るしかない!」と、直感的にコーチングが思い浮かびました。
桜庭:コーチングの成果も体験された上で、今回私とのセッションでは期待や不安はありましたか?
中山:突破口が開けることを期待していましたね。私は基本的に内向的なので、内省はできる方だと思っていたのですが、それでもモヤモヤの原因が分からなかったので……。同時に、複合的な悩みをうまく整理して、言語化して伝えられるのかという不安もありました。
コーチングセッションでは、毎回「今日は何を話したいですか?」「どういう状態で終わりたいですか?」という問いから始まります。課題とゴールの設定を自ら主体的に行うことを突き付けられるので、「やばい、ちゃんとしなきゃ」と毎回自分を奮い立たせていました。
ただ、桜庭さんの包容力のおかげで、桜庭さんの前では子どもになるというか、不思議と甘えたくなってしまうので、素直に対話ができるだろうという安心感はありました。
見えてきたのは経験不足と心の傷。「そりゃそうだ」と腹が据わった
桜庭:光栄ですね。実際コーチングを受けてみて、どんな気づきがありましたか?
中山:今回、「やりたいことがあるのになぜできないのか?」「マネジメントの位置付け、向き合い方は?」と二つのテーマを持って望んでいたのですが、それぞれ俯瞰して見ることができるようになって非常にスッキリしました。
まず一つ目については、これまで自分は周囲の期待にはハイパフォーマンスで応えてきましたが、自分の大切にしたいことや、実現したいことに向かって行動するという経験はあまりしてこなかったことに気づきました。経験がないからわからないし、暗中模索して動けなくなっていましたが、至ってシンプルなことだったのだなと。経験不足でシナプスが繋がっていないというか、「思考の筋力が足りていないな」、「脳の筋トレが必要だな」と感じました。
二つ目については、マネジメントの立場になってから立て続けにメンバーが辞めてしまったことが心の傷となり、メンバーとうまく向き合えなくなっていたことに気づきました。
これまであまりうまく人間関係を築くことができず、人の変化にも気づきにくく、成長を喜ぶ余裕もないのに、周囲に薦められるままにマネジメントの立場になったので、あまり実感がなかったのだと思います。だから、メンバーの退職も淡々と受け止められていたと思っていました。でも、コーチングの対話の中で、話しているうちに涙が止まらなくなってしまって。自分が思っていた以上に辛かったのだと、その時初めて自覚しました。
どちらも俯瞰してみてみればとてもシンプルなことで、「そりゃそうだよね」と腹が据わった感じがしました。やっとスタートラインに立てたという思いでした。
気持ちと体感。言語化し俯瞰すると、心配しすぎる自分が滑稽に見えた
桜庭:自分の中の“ミニ中山さん”と同じ方向を向いて手をつなげた感じですかね。俯瞰することでとおしゃっていますが、そこに向かう過程で、もしくは全体を通じてコーチからの問いや会話で印象に残っていることはありますか?
中山:「その時の体の感覚は?」「その時の気持ちは?」と、私の気持ちとその時の体感をよく聞かれたのが印象的ですね。
それまで思考と体の反応を結びつけて考えたことがなかったので、思い出そうにも思い出せなくて、答えるのが難しかったです。
でも、よく考えてみると、「メンバーと話をしている時、過去の人間関係での辛い経験から、苦手意識で顔がこわばってきてしまって、すると相手からも居心地の悪そうな空気が漂ってくることがあったな」と、少しずつ言語化できるようになりました。
そうして言語化したことを頭の中で再現し、自分と相手、それをバルコニーから俯瞰してみている第三者のそれぞれの視点からみるワークをしました。これが面白かったというか、第三者として見た自分が滑稽に思えたのです。考え過ぎて、いらない反応をしているなと。
桜庭:文字通り俯瞰してみることができたのですね。コーチング後、チーム内でのコミュニケーションに変化はありましたか?
中山:コーチング前は、もともと人と関わることに苦手意識があって、正直面倒だと思って深く関わることを避けていました。感情が表に出ないタイプということもあり、若い人や新人には特に怖がられていたと思います。
コーチング後は、確かに面倒かもしれないけれど、「あの時大変だったけど、仲間と頑張ったね。青春だったね」と言い合えるような熱い関係性に憧れる自分にも気づいて、まだまだ恐る恐るではありますが、歩み寄ることができるようになりました。最近では他愛もない会話もできるようになって、自分でも頑張っているなと思います。
思考の枠は自分では気づけない。思考ループにハマったらコーチング
桜庭:頑張っている中山さんに対して、周囲からはどのような反応がありますか?
中山:私がコーチングを受けていた頃、社内でも「内面的なことに向き合う」ことを実践している人が多くいました。そんな中で上司と話す機会があって、メンバーの退職に関して上司も悲しかったことを知り、共感度がかなり上がりました。すると、他のこともお互いにフィードバックし合えるようになりました。
桜庭:人間的な部分をさらけ出せるようになったということでしょうね。
中山:そうですね。それまでも関係性はよかったのですが、より人間的な共有をもっと早くにできていればよかったと思いました。
桜庭:ご自身にとっての一番の変化はどのようなことでしょう? また、それを今後どう活かせそうですか?
中山:モヤモヤの要因が分かってスッキリ前向きになれたことですね。
身についていると言えるほどまだ浸透はしていませんが、自分の「体」と「気持ち」を紐付けて考えるようになりました。それによって物事を俯瞰して見ることができるようになったので、目の前のことにモヤモヤするのではなく、「なぜそうなっているのか」に早く気づけるようになったと思います。悩み解決へのアプローチの引き出しも増えたような気がします。
桜庭:中山さんの体験を踏まえて、どんな人にコーチングを勧め たいと思いますか?
中山:理由は分からないけど動けなくてモヤモヤしている人や、思考がループしている人におすすめです。コーチングはそこから抜け出せる早道だと思います。自分の思考の枠組みや無意識の制約には自分では気づけないですから。
私の場合はコンフォートゾーンに長くいて、そこから抜け出したい、自分を変えたいと思っていた過渡期に、意思はあるのにうまくいかない状況でコーチングを受けたのが、タイミング的に非常によかったと思います。同じような状況の人にはぜひ受けてもらいたいですね。
桜庭:とても力強いお話をありがとうござました!
編集後記(桜庭)
ご自分で内省ができる方でも、ある一定の思考パターンを、自分ひとりで打破することの難しさを改めて感じました。伊藤さんのお話を伺って、コーチという「パートナー」に伴走してもらうことで、まずは自分の思考パターンや自分のあり方を観察するということですね。すぐに行動を起こすのではなく、見つめなおしてみることで、自然とこれまで存在しないと思い込んでいた選択肢が浮かび上がってくるプロセスを、細やかに言語化していただいたと感じます。
慣れ親しんだ場所から出るというのは、聞こえはいいですが、恐れや恥、不安など、様々な感情と向き合うプロセスから、自分ひとりだけでは、二の足を踏んでしまいがちです。そのような時こそ、信頼できるコーチの存在はとても意義のあるものになりそうです。